プロセスマイニング事例: FREO

loan image

Concise report of process mining case: FREO – Process Mining Camp 2020

プロセスマイニングツールとして最も初期から提供されているDiscoの開発・販売元、Fluxicon社は毎年、「プロセスマイニングキャンプ」と題したイベントを開催しています。

2020年のプロセスマイニングキャンプは、オンラインにて2020年6月15日(月)~24日(水)で開催されました。土日を除き1日1セッション、合計8セッションが行われ、様々な企業・組織でのプロセスマイニングの活用事例が報告されました。

PMI(Process Mining Initiative)では、一部のセッションについて重要なポイントに絞った簡潔なレポートを提供いたします。なお、セッション動画は後日、Fluxicon社より一般公開されます。


FREO – 日々の業務改善にプロセスマイニングを活用

FREOはオランダで消費者向けローンを提供しています。ユーザーの主なローン使途は、自動車購入、住宅リフォーム、既存ローンの借り換えなどです。ローンの申し込みはWeb、または電話で受け付け。ローンの申込件数は年間10万件以上、かかってくる電話は同2万件以上に上ります。

同社では、日々の業務管理(Operational Management)のため、BIツールのPower BIなどとともにプロセスマイニングツールを活用して、プロセス上の問題点を発見、継続的な改善を行っています。

さて、FREOの日々の業務、すなわちローン申し込みの受け付けから契約までは以下の段階で構成されています。このプロセスに従事するFREOのスタッフは60人以上です。


1 ローンの申し込み(Loan Application) – ユーザー

 ユーザー(消費者)から、Webまたは電話でローンの申し込みを受け付けます。

2 ローンの提案(Loan Offer) – 顧客接点チーム

 顧客接点チームが、申し込み内容に対して適切なローン商品を提案します。

3 書類確認(Loan Validation) – 顧客確認チーム

 顧客確認チームが、ローン申し込み者について必要な書類が揃っているかを確認します。

4 ローン審査(Credit Approval)- ローン審査チーム

 ローン審査チームが申込者の書類を審査し、ローンを提供するかどうかを決定します。

5 ローン契約(Contract)

審査がOKだった場合、ユーザーとローン契約を締結し、融資金額を銀行口座に振り込みます。


FREOでは、上記の日常業務に関してKPI(Key Performance Indicator)を設定しています。KPIは、大きくは以下の5つのカテゴリーです。


1 品質(Quality)

 工程が一回で問題なく終了するか(First Time Right)

2 迅速性(Timeliness)

 製品・サービスの提供スピードは速いか

3 受け入れ能力と生産性(Capacity and Productivity)

 効率的にメンバーの対応キャパが使われているか

4 費用と利益(Cost and Benefits)

 運用コスト、利益に与える影響度合い

5 顧客・従業員満足(Satisfaction)

 製品・サービスの提供プロセスに対する顧客、および構成メンバーの満足度


FREOでは、KPIの最初の3つ、すなわち「品質」、「迅速性」、「対応能力と生産性」が高まれば、結果的に「費用と利益」、および「顧客・従業員満足」は高まる関係にあると考え、最初の3つの改善に取り組んでいます。

そして、具体的なKPIの指標としては、マネジメントレベル、チームレベル、および日常業務レベルでそれぞれ以下のようなものがあります。


マネジメントレベル

 ・ローン申し込みから契約までの平均スループット(総所要時間)

チームレベル

 ・申し込みから初回コンタクトまでの平均所要時間(顧客接点チーム)

 ・書類受領から書類確認終了までの平均所要時間(顧客確認チーム)

 ・確認後書類受領からローン審査終了までの平均所要時間(ローン審査チーム)

日常業務レベル

 ・申込件数(全チーム)

 ・24時間で連絡した申込件数(顧客接点チーム)

 ・24時間で書類確認した申込件数(顧客確認チーム)

 ・24時間で審査した申込件数(ローン審査チーム)


同社ではこれらKIPをBIのダッシュボードで日々モニタリングすると同時に、問題点を発見するための深堀り分析にプロセスマイニングを活用しています。

プロセスマイニングでは、日々のKPIをモニタリングしているだけではわからない、実際の業務の流れが可視化できます。FREOのローン申し込みから契約までの業務プロセスにも様々な問題が発見できました。

たとえば、ユーザーが申し込んだ後、顧客接点チームが連絡してもユーザーから返信がない、あるいは商品を提案した後、書類が揃わない、などの理由で、それぞれ適切なフォロー施策を展開するため、様々な業務手順の分岐が発生しています。また、ローン受け付け、書類確認、ローン審査のそれぞれの段階に移る箇所で処理待ち、すなわちボトルネックが発生していることが定量的に把握できます。同社では、手順の組み換えやリソース(担当者)のアサインを柔軟に見直すなどして、問題の解消に当たっています。

同社では、プロセスマイニングを単なる問題発見ツールとしてだけでなく、実際の業務プロセスが可視化できることで、関係するメンバーが「すごい(Sense of Excitement)」と思ってもらうこと、また、非効率性やボトルネックが一目瞭然となることから「すぐに改善しなければ(Sense of Urgency)」という気持ちを喚起できる仕掛け、すなわちプロセス改善を着手させ(Initiator)促進する(Katalysator)ことのできる有益なアプローチとして活用しています。

Seventh Day of Camp – Freo – Process Mining Camp 2020

プロセスマイニング事例: AIG

simulation image

Concise report of process mining case: AIG – Process Mining Camp 2020

プロセスマイニングツールとして最も初期から提供されているDiscoの開発・販売元、Fluxicon社は毎年、「プロセスマイニングキャンプ」と題したイベントを開催しています。

2020年のプロセスマイニングキャンプは、オンラインにて2020年6月15日(月)~24日(水)で開催されました。土日を除き1日1セッション、合計8セッションが行われ、様々な企業・組織でのプロセスマイニングの活用事例が報告されました。

PMI(Process Mining Initiative)では、一部のセッションについて重要なポイントに絞った簡潔なレポートを提供いたします。なお、セッション動画は後日、Fluxicon社より一般公開されます。


AIG (USA) – Process Wind Tunnel(プロセス風洞)で確実な改善効果を

グローバルに展開する保険会社、AIGでは様々な業務プロセス改善に取り組んでいます。特に、米国AIGの”Data-Driven Process Optimization”と呼ばれる部署では、プロセスマイニング、シミュレーション、BIを組み合わせることで改善成果を積み重ねています。

Data-Driven Process Optimization部署では、プロセス改善の一連の手順を「プロセス風洞(Process Wind Tunnel)」と呼んでいます。自動車や航空機、建築物などの設計においては、風洞に模型を置いて風の流れ等を測定する「風洞実験」を行います。同様に、プロセスの改善にあたって、シミュレーションによる改善成果の予測を行った上で改善施策に展開するという手順を踏んでいるのです。

プロセス風洞は以下の4つの段階で構成されます。

1 データ収集(Data Collection)

ITシステムからのイベントログ抽出に加えて、ビジネスルール、およびリソース(担当者などの属性データを統合します。

2 現状分析(Current State Analysis)

BIツール、プロセスマイニングツールを用いて現状プロセスを可視化し、様々な視点で分析を深めます。

3 未来状態設計(Future Sate Design)

現状を再現するシミュレーションモデルを作成し、さらに、リソース配分の変更などプロセスを最適化するようにモデルのパラメターを変更し、改善成果を試算します。

4 実行

前項のシミュレーションを踏まえ、パイロットプロジェクトを走らせたり、システム改修、新ツールの導入などの改善施策を実行し、改善状況をモニタリングします。

今回紹介された取り組み例はサービス業務です。これは、お客様から届く、月間6万件に上る様々な書類を処理する業務です。書類は、USPSの通常便であったり、翌日配達便であったり、FAX、あるいはeメールと様々な形態があります。

紙の場合には開封して中身をチェックし、スキャンするといった手作業があります。こうした手作業については動作調査(motion study)を行って平均処理時間など、シミュレーションに必要なパラメターとなる情報を収集しています。

データ化された後の処理は、BIツールで曜日別の書類到着数などの統計的分析、およびプロセスマイニング分析を行って現行プロセスモデルを可視化し、プロセス上の問題点を抽出するとともに、データ分析結果から得られた数値はシミュレーションのパラメターとして用いています。

サービス業務の場合、シミュレーションの結果、50%ものスループット(総所要時間)の改善が見込めることがわかり、実際に改善施策を講じたところ、シミュレーションの予測に等しい結果が得られたとのことでした。

Third Day of Camp – AIG – Process Mining Camp 2020

プロセスマイニング事例: Lufthansa Technik

airline engine maintenance

Concise report of process mining case: Lufthansa Technik – Process Mining Camp 2020

プロセスマイニングツールとして最も初期から提供されているDiscoの開発・販売元、Fluxicon社は毎年、「プロセスマイニングキャンプ」と題したイベントを開催しています。

2020年のプロセスマイニングキャンプは、オンラインにて2020年6月15日(月)~24日(水)で開催されました。土日を除き1日1セッション、合計8セッションが行われ、様々な企業・組織でのプロセスマイニングの活用事例が報告されました。

PMI(Process Mining Initiative)では、一部のセッションについて重要なポイントに絞った簡潔なレポートを提供いたします。なお、セッション動画は後日、Fluxicon社より一般公開されます。


Lufthansa Technik – 部品補修プロセスの改善に活用

Lufthansa Technikは、航空機の整備、補修、オーバホールのサービスを提供しています。同社にとって最も重要な課題は、クライアント(航空会社)から預かった航空機の整備や補修を可能な限り速やかに行うことです。というのも、整備、補修に係る時間がみじかいほど、航空機の運航時間が増え、クライアントの収益向上につながるからです。したがって、Lufthansa Technikにおけるプロセス改善においては、「スピードアップ」が基本戦略です。

さて、プロセスマイニングに取り組む同社が今回、事例として取り上げたのは部品補修(Parts Repair)のプロセスです。プロセスマイニング分析によって発見された業務遂行上の問題点の改善には、リーンマネジメントの考え方がベースにありますが、さらにボトルネックに関しては制約理論(Theory of Constraints)を適用した点が特徴的です。

部品補修プロセスはほとんどがERP上で遂行されていることから、クオリティ、信頼性の高い分析対象データを抽出することが可能でした。一部、システム外で行われている業務については、担当者が開始時間、終了時間を手入力で記録することでイベントログデータが作成されています。

プロセスマイニング分析結果から、部品補修プロセスの総所要時間(ターンアラウンドタイム、またはスループットと呼ぶ)を長くしている大きなボトルネックは3カ所ありました。すなわち、「検査(Inspection)」、「提案と承認(Proposal and approval)」、「修繕と認証(Repair and certification)」です。

各工程では、大きなユニットの60-80%が処理待ちとなっており、このため6日~12日ほど想定よりも時間が掛かっていました。どれも解決すべきボトルネックではありましたが、どの工程から着手するか、優先順位をつけるために同社では「制約理論(Theory of Constraints)」を適用しました。制約理論は、プロセス改善を目的としてボトルネックの解消に取り組むためのアプローチです。そして、制約理論に基づき、「提案と承認(Proposal and approval)」からボトルネック解消のための施策を開始したのです。

また、プロセスマイニング分析後の改善の取り組みにおいては、「スピードアップ」の基本戦略を踏まえて、ワークショップを開催、「価値提供プロセスマップ(Value Stream Map)」を作成してプロセス課題を抽出、Wiki、Jira、Backlogなどのツールを用いてプロセス改善プロジェクトを推進しました。

プロセスマイニング分析後の改善の取り組みにおいて、スピードアップの戦略方針を踏まえて、ワークショップを開催、プロセスの流れを見直しつつ課題を抽出、Wiki、Jira、Backlogなどのツールを用いてプロセス改善プロジェクトを推進しました。

First Day of Camp – Lufthansa Technik – Process Mining Camp 2020