DX成功の鍵を握る「BPM-COE」とは何か?

dx digital transformation

デジタル化、グローバル化が急速に進む経済・社会において、DX、すなわち「Digital Transformation」に現在、多くの企業が取り組んでいます。DXの取り組みの中には、「紙の資料をデジタル化する」といった初歩的なものも含めるのが一般的ではあります。しかし、そうしたマイナーなデジタル化はあくまで「とっかかり」に過ぎません。

DXの本質、言い換えると究極のゴールは、自社のビジネスモデル、およびビジネスプロセスを全体的に変革することであること。ただし、デジタル経済、グローバル経済が進む現在では、デジタルを活用した変革に必然的になるということを理解しておく必要があります。

では、最終的には全社的な取り組みとなるDXの成功の鍵を握るものは何でしょうか?

もちろん、DX成功の鍵はひとつだけではありません。しかし、他のあらゆるものが揃ったとしても、これなくしては、DXを着実に推進させ成功に導くことはできないと、確信を持って言えるものがあります。それは、DXを推進する常設の専任部署である「COE(Center of Excellence)」です。特に、DXの取り組みの肝となるビジネスモデル、ビジネスプロセスを変革するためには、BPM(Business Process Management)と呼ばれる、包括的な方法論が有効であることから、BPM-COEと呼ぶ専任チームの立ち上げが重要と考えます。

これまで、部署単位でRPAによるタスク自動化を実現し、部分的な改善には成功してきたものの、会社全体での取り組みにまでは広がることがなく、「このままでは本来のDXに辿り着けない」と焦燥感を募らせた企業が、COEを設置する動きが活発になっていくと、私は考えています。

今回は、DX成功の鍵のなかでも最も重要な「BPM-COE」について解説します。


BPM COE (Center of Excellence)とは?

BPMについてはひとまず脇に置いて、COEについて説明しましょう。COEはひとことで言えば、部門横断型の業務を担当する特任組織です。基本的には常設であり、専任のメンバーが所属します。すでにCOEを立ち上げている企業も増えてきていますが、具体的には、「BPR部」や、「DX推進部」といった部署名で運営されていることが多いようです。

一方、BPM(Business Process Management)は、ビジネスプロセスを適切に運営するための方法論です。現状(as-is)のプロセスの改善だけでなく、新しいビジネスモデルに基づく、あるべき(to-be)プロセスの設計と展開、安定的運用と継続的な監視までをカバーする包括的なものです。

したがって、BPM-COEは、DXの推進の核となるビジネスモデル、ビジネスプロセスの改善や再設計、運用、継続的監視を通じた継続的改善のための方法論に基づく、DX推進の役割を果たす部署、ということになります。

なぜ、BPM-COEは部門横断型の組織なのか?

前述したように、DXの最終的なゴールは、会社全体のビジネスモデル、ビジネスプロセスの見直しです。したがって、製造業であれば、調達、生産、物流、販売、マーケティング、サービス、財務など広範囲の部署にまたがって価値を生み出す「バリューチェーン」全体を俯瞰的に捉え、全体最適化の視点でDXに取り組む必要があるからです。

value chain

なぜ、常設の特任組織なのか?

会社再建のための一時的な取り組みであれば、かって日産自動車において、各部署からのメンバーで編成されたバーチャルな組織、「ファンクショナルチーム」のような暫定組織が推進役となることも可能でしょう。しかし、DXで狙う、根本的な全社変革は長期的な取り組みであり、かつ継続的に改善し続けなければなりません。またその実行・運用に当たっては、デジタルの知識を含む高度な専門性が求められることから、データ分析やコンサルティングスキルを持つ専門職も含む常設のBPM-COEが設置されなければならないのです。


BPM-COEの役割と主要タスク

BPM-COEの基本的な役割は、全社最適化の視点で「自社のビジネスシステムやビジネスプロセスをどのように変革すべきか」を企画し、全社に展開するとともに、それによって影響を受ける各部署の業務の見直しを支援することです。すなわち、BPM-COEは、DX推進の司令塔であると同時に、各部署の変革を手助けするコンサルタントの役割を果たす必要があります。

また、どのような変革であれ、ITソリューションの導入や開発がほぼ必ず伴いますので、現場部門と、ITシステム開発を担当するIT部門との間を円滑につなぐ役割を果たさなければなりません。

BPM-COEの主要タスク

BPM-COEが主導すべきタスクには以下のようなものがあります。

 ・現状(as-is)のビジネスプロセスを把握し、見える化するための業務分析を行う 

 ・見える化された現状プロセスにおける改善ポイントを洗い出し、優先順位をつけつつ改善施策を立案する

 ・改善施策を具体的な実行計画に落とし込み、変革が完了するまでの変更管理を行う

 ・変革後の効果を評価するとともに、継続的な運用管理を行い、継続的な改善を主導する


BPM-COE所属メンバーに求められるスキル

 BPM-COEに所属するメンバーにはどのようなスキルが求められるでしょうか。基本的にはなんらかの専門性を有するエキスパートである必要があります。必要となる主なスキルとしては次のようなものが挙げられます。

・ビジネスモデルや、ビジネスプロセスを作成できるスキル・・・ビジネスアナリシス、ビジネスモデリング、ビジネスプロセスモデリング(ビジネスアナリスト、ビジネスコンサルタントなどと呼ばれる役職の担当)

・ビジネスモデル、ビジネスプロセスを定量的、および定性的に分析し、改善すべき課題を抽出できるスキル・・・リーン、シックスシグマ、データ分析、プロセスマイニング、タスクマイニング等含む(ビジネスアナリスト、プロセスアナリスト、データサイエンティストなどと呼ばれる役職が担当)

・あるべき(to-be)ビジネスモデル、ビジネスプロセスを着想、設計できるスキル・・・ワークデザイン、デザインシンキング、アートシンキング等、各種発想法含む(ビジネスアーキテクト、プロセスアーキテクトなどと呼ばれる役職の担当

・ビジネス要求をITの機能要件に落とし込み、またシステム開発のディレクションができる機能(ビジネスアナリスト、システムエンジニアなどと呼ばれる役職の担当)

・プロジェクトマネジメントスキル(COEは継続的な変革の取り組みを主導するものとはいえ、個々の取り組みはプロジェクトとしての立ち上げとマネジメントが必要です)

team member

COEが機能するためには

さて、DXを主導する専任組織であるBPM-COEを立ち上げたのはいいが、うまく回らないケースがあります。うまく回らない原因についてもいろいろと挙げることができますが、逆にきちんと機能するための最低限の必要条件は、トップマネジメントの全面的なバックアップがあることです。

多数の部門が関わる全社レベルのビジネスモデルの見直し、またエンド・ツー・エンドのビジネスプロセスの根本的な組み直し、また大胆なデジタル化に取り組むことになるわけですから、現場からの反発や抵抗が不可避です。このため、トップマネジメントが、全社体制でDXを推進することの意義を語り、ビジョン、ミッションを明確に示しつつCOEを全面的にバックアップすることが求められます。

ビジネスプロセス治療法

how to cure bad process

How to cure a process with problems
English follows Japanese. Before proofread.

今回は、プロセスマイニングを活用して、ビジネスプロセスを改善する流れを病院での治療の手順と対照させながら説明します。

プロセスマイニングは、イベントログデータから、見えなかったビジネスプロセスを可視化することで、プロセスに潜む様々な課題・問題を発見することを目的としています。

この「プロセスを可視化する」という点から、プロセスマイニングはしばしばX-ray、すなわちレントゲンに例えられます。ただ、病気の治療と同様、病巣(課題・問題)を発見して終わりではなく、適切な治療(改善施策)を施し、健康な状態に戻す、すなわち改善された「理想プロセス」を実現することが最終目的です。

では、まず病院における医療活動の流れを概説しましょう。大きくは、「診断ステージ」と「治療ステージ」の2段階に分けています。


医療活動

診断ステージ

患 者

発熱、咳などなんらかの症状を抱えた患者の来院が治療の起点となります。

問 診

まずは、現在の症状の程度などについて質問し問診を行います。

レントゲン

X-ray機器を用いて、病巣が存在すると思われる箇所を撮影します。

レントゲン写真

X-ray写真を見ながら、病巣の有無を確認します。

診 断

X-ray写真の結果から、どのような病気に罹患しているか判断します。

身体診査

さらに、さまざまな検査を行い、上記診断結果が正しいかを検証します。


治療ステージ

治療方針

診断結果に基づき、また患者の意向も踏まえて治療方針を行います。たとえば、外科手術を実施するか、薬物治療をどのように行うか、などについてです。

手 術

病巣を除去するほうが良い場合、手術を行います。

医薬品

医薬品だけ、また手術と併せて医薬品を投与して治療を行います。

治 癒

病因が除去され、症状がなくなりました。治療完了です。


次に、上記病院での診断・治療の流れに沿って、ビジネスプロセス改善の手順を概説します。


ビジネスプロセス改善

現状把握 - 診断ステージ

問題プロセス - 患者

スループットが長い、運営コストが高い、顧客からの苦情が寄せられている、など、なんらかの現象としての問題が発生しているプロセスを改善すべき対象として選択します。

プロセスセットアップ - 問診

プロセスの概要、処理件数、担当部署・担当者など、改善対象プロセスに関わる基本情報を主にインタビューを通じて整理します。プロセスに関わるシステムの仕様書やマニュアルなどがあれば、それらも併せて内容を確認します。

プロセスマイニング - X-ray(レントゲン)

改善対象プロセスのイベントログデータを元にプロセスマイニングツールを用いて分析を行い、現状プロセスのフローチャートを作成します。

現状プロセス - X-ray写真(レントゲン写真)

現状プロセスについて、頻度別、所要時間別など様々な切り口での分析を行います。

問題・課題発見 - 診断

上記分析結果から、現象としての問題・課題を引き起こしている箇所、すなわち、時間がかかりすぎている非効率な手順や、待ち案件が積みあがっているボトルネックなどを特定します。

現場インタビュー・観察 - 身体診査

特定した問題箇所について、現場の担当者に対するインタビューや観察調査などを行い、根本原因の究明を図ります。

プロセスの非効率性やボトルネックを発生させている根本原因としては、あまり意味のない手順が多い、ミスが多く、やり直しをするケースが多い、処理すべき案件にたいしてアサインされている担当者数が少ない、などがあります。


改善活動 - 治療ステージ

改善方針 - 治療方針

プロセスに関わる様々な問題・課題、それらを引き起こしている根本原因が判明したら、改善施策を立案します。

大きな改善方針としてはまず、スループットを短縮する、コストを削減する、顧客満足度を向上する、など目的を明確化することが重要です。

改善施策実行 - 手術・医薬品

改善施策には大掛かりなものからちょっとした修正まで様々な選択肢がありえます。

ゼロベースでプロセスを組みなおすようなBPR(Business Process Re-engineering)は、外科手術にたとえることができるでしょう。マニュアルの業務をRPAのソフトウェアロボットに代替するのは、人工心臓に取り換えるようなものと言えるかもしれません。

ちょっとした手順の変更を行うだけで所要時間が改善できるとしたら、それはシンプルな薬物療法で治療できる病気だったとなるでしょう。

改善プロセス ー 治癒

有効な改善施策を展開した結果、望ましいプロセスが実現できたらひとまずプロジェクト完了です。


病気の治療において、定期検診が必要なように、問題が再発しないか、新たな問題が発生しないか、継続的に対象プロセスを監視することが必要です。


How to cure a process with problems

In this article, I’ll explain the flow of using process mining to improve business processes, contrasting it with the procedure of treatment in a hospital.

Process mining aims to discover various issues and problems hidden in the process by visualizing invisible business processes from the event log data.

In terms of this “visualization of the process”, process mining is often likened to an X-ray. However, just as in the treatment of diseases, the ultimate goal is not the discovery of the lesion (Inefficiencies and bottlenecks) but the implementation of appropriate treatment (improvement measures) and the return to a healthy state, in other words, the realization of an improved “ideal process(to be proess)”.

Let’s start by outlining the flow of medical activities in a hospital. Broadly speaking, there are two stages: the “diagnostic stage” and the “treatment stage”.


●Medical activities

Diagnostic stage

Patient

The starting point for treatment is when a patient comes in with some kind of symptom such as fever or cough.

Preliminary interview

First, we will ask questions about the extent of your current symptoms and conduct an interview.

X-rays

Using an X-ray machine, the area where the lesion is thought to exist will be photographed.

x-ray photograph

The presence of the lesion is confirmed by looking at the X-ray photograph.

Diagnosis

From the results of the X-ray photos, you can determine what diseases the patient have.

Physical examination

In addition, various physical exam and tests will be performed to verify the correctness of the above diagnosis.


●Treatment Stage

Treatment policy

The course of treatment is based on the results of the diagnosis and the patient’s wishes. For example, it’s about whether to carry out surgery or how to treat medication.

Surgery

If it is better to remove the lesion, surgery will be performed.

Medication

The treatment is performed by administering medications alone or in conjunction with surgery.

Recovery

The etiology has been eliminated and the symptoms are gone. Treatment is complete.


Next, we’ll outline the steps to improve business processes along the path of diagnosis and treatment at the above hospital.


●Business Process Improvement

Understanding the current situation – Diagnostic stage

Process with problems – Patient

Select processes that are experiencing problems as phenomena, such as long throughput, high operating costs, customer complaints, etc., as targets for improvement.

Process Setup – Preliminary interview

Basic information related to the process to be improved, such as an overview of the process, the number of processes, and the department or person in charge, will be organized through interviews. If there are any specifications or manuals for the system involved in the process, check them as well.

Process Mining – X-ray

Based on the event log data of the process to be improved, we analyze it using a process mining tool and create a flowchart of the current process.

As is process – X-ray photograph

We analyze the current process from various perspectives, such as frequency and time required.

Problem identification – Diagnosis

Based on the results of the above analysis, we identify the areas that are causing problems or issues as a phenomenon, i.e. inefficient procedures that are taking too long, or bottlenecks that are piling up pending cases.

On-site interview and observation – physical examination

To identify the problem areas, we conduct interviews with the person in charge at the site and conduct observational surveys to identify the root cause.

The root causes of process inefficiencies and bottlenecks are: too many meaningless steps, too many mistakes, too many reworkings, and too few people assigned to deals that need to be done.


Improvement Activities – Treatment Stage

Improvement Policy – Treatment Policy

Once we have identified the various problems and issues related to the process and the root causes of these problems and issues, we plan improvement measures.

As a major improvement policy, it is important to first clarify the objectives, such as reducing throughput, reducing costs, and improving customer satisfaction.

Implementation of improvement measures – Surgery and Medication

There are a variety of options for improvement measures, ranging from major to minor modifications.

BPR (Business Process Re-engineering), which is a zero-based re-engineering of the process, can be compared to surgery. Replacing manual tasks with RPA software robots might be like replacing an artificial heart.

If a small change in procedure could improve the time required, it would be a disease that could be treated with simple medication.

Improved Process (To be process) – Recovery

Once the desired process has been achieved as a result of effective improvement measures, the project is complete.


Just as regular check-ups are necessary in the treatment of a disease, it is important to continuously monitor the target process to ensure that problems do not recur or new problems arise.

プロセス再設計 – 9つの経験則

heuristic process redesign

Heuristic Process Redesign – Basic 9 Approaches
English follows Japanese. Before proofread.

プロセスマイニングやタスクマイニングで、分析対象プロセスにおける非効率なプロセスやボトルネックを発見できた。しかし、そこで完了ではありませんよね。

言うまでもなく、プロセスマイニングやタスクマイニングは、データ分析を通じて問題点を容易にあぶりだすことができますが、「こうすれば問題を解決できる」という改善施策を教えてくれるわけではありません。(将来的には、プロセスマイニングツールに高度なAI機能が実装され、改善施策のヒントを示唆してくれる、という可能性はあります)

したがって、プロセスに関わる問題点を発見できたら、プロセスマイニング、タスクマイニングの出番はいったん終了となります。

問題点発見後に活躍するのは、リーン・シックスシグマを始めとする問題解決手法です。問題解決手法では、5WHYや要因分析(魚の骨分析)などの各種フレームワークを用いて、問題の背景にある根本原因を探るとともに、具体的な改善施策を立案、実行します。

当記事では、具体的な改善施策を検討するために参考になる9つの再設計手法をご紹介します。これら再設計手法はBPM(Business Process Management)において体系化されたものです。過去に数多く実施されたプロセス改善プロジェクトを通じて経験則的に編み出された実践的な手法です。

なお、実はプロセス再設計の経験則は30個近くあります。うち、今回ご紹介する9つの手法は最も一般的で改善効果が出やすいものです。

なお、9つのプロセス再設計法は、大きくは3つのレベル(タスクレベル、フローレベル)、プロセスレベル)に分類することができます。各手法の解説は3つのレベルごとに行っていきます。

タスクレベル

プロセスを構成する個々のタスク(アクティビティ)についてなんらかの変更行うものです。

1 タスク除去

所要時間が長い要因となっているタスクについて、そもそもそのタスクはやる価値があるのか、いっそなくしてしまう、あるいは回数を減らすものです。

例えば、承認タスクが3段階あり、形骸化している場合、1段階減らして2段階のタスクにする。また、検品プロセスで、全品に対して検査を行うのではなく、無作為抽出した一部の製品のみの検査を行う統計的方法に変えることで、検査タスク件数を数分の一に減らす、といったことが考えられます。

2 タスク結合

タスクが細かく細分化されていたり、複数の部署間でタスクの受け渡しが発生していると、所要時間が長くなりがちです。したがって、複数に分かれているタスクを1つのタスクで統合してしまう、他部署にタスクを渡さないで自部署でまとめてタスクをやってしまう、といったタスク統合が有効な場合があります。(逆に、複数の作業が一つのタスクにまとまっていることで非効率になることもあります。その場合は、タスクを分解することが有効な場合もあります)

3 トリアージュ(区分け)

あるプロセスに、条件分岐でサブプロセスを走らせたほうが所要時間が短縮できる場合があります。たとえば、調達プロセスで購買申請受付に続くタスクとして、金額が1千万円以上、以下で異なるプロセスを走らせるといった方法です。

逆に、サブプロセスが多すぎることによって複雑化している場合には、いくつかのサブプロセスを統合することも検討すべきでしょう。


フローレベル

タスク単体ではなく、タスクとタスクの順序についての改善手法です。

4 再配列

タスクの流れを見直し、最も効率的で、また作業量が最小となるような順番に組みなおすのが再配列です。

例えば、調達プロセスにおいて、AとBの2つの承認タスクが含まれている場合に、Aのタスクでは平均1%が差戻しとなり、Bのタスクでは10%が差し戻しになるとします。この場合、より多くの差戻しが発生するBのタスクをAのタスクの前にもってきたほうが、Aの承認件数が相対的に減少し、全体としてはより効率的、作業量を減らすことが可能となります。

5 並行処理強化

あるプロセスにおいて、前のタスクが終了して初めて次のタスクが始まるという逐次処理が行われている場合に、逐次ではなく、並行して複数のタスクを処理するプロセスに変更すれば、プロセス全体の所要時間の短縮が見込めます。

逐次処理タスクを並行処理に変更することはしばしばスループット短縮に大きな効果があります。


プロセスレベル

個々のタスク、タスク間の順序以外に、別の視点も踏まえた改善を行うものです。

6 専門化と標準化

専門化は、あるプロセスを複数のサブプロセスに分けて、それぞれに担当者を割り当てて専門性を高めてもらうことで効率化や顧客満足向上などを目指すものです、例えば、VIPと一般客に分けて、特にVIPに対してはスピーディで丁寧なサービスプロセスを提供するようなものです。

逆に、標準化は、製品別などで分かれているために同一の業務なのに複数のプロセスが存在している場合に一本化を図るものです。

7 リソース最適化

同じ業務プロセスを複数の担当者で遂行している場合に、特定の担当者に業務量が集中し、他の担当者が遊んでしまっているといった状況、あるいは、業務量に対して担当者が少ないために待ち業務が積みあがってボトルネックになっている、といった問題点に対しては、担当者の割り当てを工夫する、担当者のシフトを見直すなどの「リソース最適化」が必要となります。

8 コミュニケーション最適化

プロセスの流れが、電話やFAX、メールなど、なんらかのコミュニケーションをきっかけに駆動する場合、例えばコミュニケーションを受けるタイミング、処理するタイミングなどを変更することで、効率化や顧客満足が向上できる場合があります。

9 自動化

明確な一定の手順が存在する定型業務の場合はRPAによる自動化が有効となるでしょう。また、インプットされた情報に基づいて自動判定するようなアプリケーションを開発するなど、自動化の選択肢も複数あります。

heuristic process redesign

自社のプロセス改善・改革プロジェクト、あるいはDX(Digital Transformation)推進プロジェクトにおいて、個々の問題・課題に対する解決策を導く場合に、まずはこれら9つの経験則が適用できないか検討してみましょう。

なお、冒頭で述べたように、プロセス再設計の経験則は、『Fundamentals of Business Process Management』では29個紹介されています。

また、同書に準拠したMOOC(eラーニング)では、今回ご紹介した9つのプロセス再設計方法について詳しく解説されていますのでぜひご覧になってみてください。

(Resources)

Fundamentals of Business Process Management, Second Edition
Marlon Dumas, Marcello La Rosa, Jan Mendling, Hajo A. Reijers

MOOCs – Fundamentals of BPM


Heuristic Process Redesign – Basic 9 Approaches 

Thanks to process mining and task mining, you are able to find inefficient processes and bottlenecks in the process. But that’s not where it’s done, is it?

Needless to say, process mining and task mining make it easy to uncover problems through data analysis, but they don’t tell you how you can solve problems. (It’s plausible that in the future, advanced AI capabilities will be added in process mining tools to hint at ways to improve them.

Therefore, once a problem related to the process has been found, the process mining and task mining are no longer needed for the time being.

What comes into play after finding a problem is problem-solving techniques, including Lean Six Sigma. In those problem-solving methods, you can use various frameworks such as 5WHY and factor analysis (fish bone analysis) to find the root cause behind the problem, and then plan and implement specific improvement measures.

This article introduces nine redesign methods that can be used as a reference to consider specific improvement measures. These redesign methods are systematized in BPM (Business Process Management). This is a practical method that has been developed empirically through numerous process improvement projects that have been implemented in the past.

In fact, there are nearly 30 rules of thumb for process redesign. Of these, the nine methods I’m going to share with you are the most common and most likely to produce improvements.

The nine process redesign methods can be broadly categorized into three levels (task level, flow level) and process level). Each method will be explained at each of the three levels.

TASK Level

This is a change of any kind to the individual tasks (activities) that make up the process.

1 Task Elimination

For those tasks that are taking a long time, it’s important to ask yourself if the task is worth doing in the first place, eliminate it, or reduce the number of times you do it.

For example, if there are three levels of approval tasks and they are formidable, reduce them by one level to two. In the inspection process, the number of inspection tasks could be reduced by a fraction of a percent by changing to a statistical method that only inspects a small portion of randomly selected products, rather than inspecting all products.

2 Task composition (decomposition)

When tasks are subdivided into smaller chunks, or when tasks are passed between multiple departments, the time required is often longer. Therefore, it may be effective to consolidate multiple tasks into a single task, or to consolidate tasks in your own department without passing them on to other departments. (Conversely, multiple tasks can become inefficient when they are combined into a single task. (In that case, it may be useful to break down the task).

3 Triage

In some cases, running sub-processes in a conditional branch may reduce the time required for a process. For example, in the procurement process, a task following the receipt of a purchase application would be to run different processes for amounts over 10 million and below.

Conversely, if the complexity is compounded by too many sub-processes, you may want to consider consolidating some of them.


FLOW level

It’s an improvement method for the order of tasks, not just a single task.

4 Re-sequencing

Re-sequencing is about reviewing the flow of tasks and rearranging them in the order that is most efficient and requires the least amount of work.

For example, if the procurement process includes two approval tasks, A and B, then on average 1% of the A task will be set back and 10% of the B task will be set back. In this case, bringing task B, which has more regressions, before task A will result in a relative decrease in the number of approvals for A, which will be more efficient and reduce the workload overall.

5 Parallelism enhancement

In some processes, where sequential processing is used, where the next task starts only after the previous task is completed, if the process is changed to one where multiple tasks are processed in parallel instead of sequentially, it is expected to reduce the time required for the entire process.

Changing sequential processing tasks to concurrent processing often has a significant effect on throughput reduction.


PROCESS level

It is an improvement based on another perspective besides the individual tasks and the order between them.

6 Specialization and standardization

Specialization aims to improve efficiency and customer satisfaction by dividing a process into multiple processes and assigning a person in charge to each sub-process to increase the expertise. For example, it is possible to divide a process into VIPs and general customers and provide a speedy and courteous service process especially for VIPs.

On the contrary, standardization is an attempt to unify multiple processes in the case of the same business because they are separated by product, etc.

7 Resource Optimization

When multiple people are running the same business process, the amount of work is concentrated on a particular person while other people are playing around, or when there is a bottleneck due to the lack of people in charge of the same amount of work, it is necessary to “optimize resources” by devising the assignment of people in charge or reviewing the shifts of people in charge.

8 Communication Optimization

If the process flow is driven by some kind of communication, such as a phone call, fax, or email, you may be able to improve efficiency and customer satisfaction by changing the timing of receiving or processing communication, for example.

9 Automation

For routine tasks where there is a clear set of procedures, automation with RPA can be effective. There are also multiple options for automation, such as developing an application that makes automatic decisions based on the input information.

Let’s first consider whether these nine rules of thumb can be applied to your own process improvement/innovation project or DX (Digital Transformation) promotion project when guiding a solution to an individual problem or issue.

As mentioned at the beginning, 29 rules of thumb for process redesign are presented in the “Fundamentals of Business Process Management”.

In addition, please take a look at the MOOCs (e-learning), which is based on the book, for detailed explanations of the nine process redesign methods introduced in the book.

(Resources)

Fundamentals of Business Process Management, Second Edition
Marlon Dumas, Marcello La Rosa, Jan Mendling, Hajo A. Reijers

MOOCs – Fundamentals of BPM

事業革新に取り組むための「イノベーション手法ポートフォリオ」

innovation method portfolio

Innovation method portfolio useful for business innovation

新型コロナにより、社会の在り方が大きく変化しつつあります。厳しい行動制限が解除された後の「Post Corona」の時代においても、私たちは新型コロナと折り合いをつけて生活していかざるを得ないため、「Before Corona」と同じ姿に戻ることはないでしょう。

さて、経済の担い手である企業は、あらゆる分野において急速に進展するデジタル化への対応のため、コロナ以前から「DX」、すなわちデジタル変革の推進に取り組んできました。とはいえ、旧来の慣れ親しんだやり方からの脱却は簡単ではなかった。ところが、新型コロナという非常事態によって、ほぼすべての企業が、デジタルを活用した事業革新に本腰を入れざるをえなくなりました。

今回は、事業革新に取り組むために役立つ様々な手法の位置づけについて解説します。

下図に示したのは、4つの次元で各種革新手法を位置付けたものです。「イノベーション手法ポートフォリオ」と呼ぶことにします。

横軸:内的(Internal)  ⇔ 外的(External)

横軸は「内的(Internal)」と「外的(External)」の2つです。

「内的」とは、社内のやり方、プロセス、資源などに焦点を当てるものです。一方、「外的」は、顧客や競合他社など、外部の情報を積極的に活用します。

縦軸:分析的(Analytical) ⇔ 創造的(Creative)

縦軸は「分析的(Analytical)」と、「創造的(Creative)」です。

「分析的」とは、文字通りものごとを構造的・分析的に捉えるもので、しばしば定量的なデータの活用が前提となります。

一方、「創造的」とは、ものごとを多面的に捉え、新たな価値を見出そうとするアプローチです。


それでは、4つの次元それぞれに含まれる手法について簡単に解説しましょう。(それぞれの手法の詳細な解説は各自、Google検索などでお調べください)

分析的 x 内的

現在のやり方を強化するアプローチです。ここには、TRIZ、制約理論、リーンマネジメント、シックスシグマ、BPR(Business Process Re-engineering)が含まれます。革新(Innovation)というよりは、主に改善(Improvement)のための手法です。現在の業務プロセス、業務内容を把握し、非効率性、ボトルネックなどの問題点を発見し、改善施策を講じます。組織再編も含めた、全社的に根本的な改善を行うのがBPRです。

これらのアプローチは、特にムリムダの削減による生産性向上を通じたコスト削減に効果があります。

なお、この次元において、ファクトベースでの価値ある分析手法を提供できるのが「プロセスマイニング」です。

分析的 x 外的

外部にあるよりよい方法を取り込むアプローチです。この次元には、ベンチマーキング、参照モデリングが入ります。

ベンチマーキングは基本的には、他企業の優れた取り組みと自社を比較して、劣っているポイントを明確化する取り組みです。また、参照モデリングは、自分の業界で標準的な手順、あるいは優れた手順を自社でも採用することでクイックな成果を目指します。

創造的 x 内的

社内に存在するがまだ活用されていない方法を試すことです。ここには、ポジティブな逸脱やクラウドソーシングが入ります。

ポジティブな逸脱とは、現在主流となっている事業や、人、手順ではなく、傍流にある異端的な事業や、人、手順に着目し、それを全社に展開するような取り組みです。企業内では、異端的なものはしばしばネガティブな「逸脱」と見なされてあまり評価されず、修正を求められます。しかし、こうした逸脱の中には、新たな環境変化に対応できる革新的な事業、人、手順が含まれていることがあるのはご存知でしょう。

クラウドソーシングは、外部的な要素も多分にありますが、様々な知識、知恵、経験を持つ多様な人材を社内資源と組み合わせることで、自社だけで議論していても発想できなかった新たなアイディアを創造します。

創造的x外的

自社資源に頼らず、新たな方法を創造するアプローチです。SCAMPER 、デザイン思考が含まれます。

ここでは、様々な制約を取り払ってものごとを多面的に考え、また対象顧客を注意深く観察することなどを通じて、柔軟な発想を最大限に発揮しようとします。


さて、以上のアプローチのどれが貴社にとって最適かはケースバイケースであり、一概には言えません。

ただ、ポストコロナの厳しい経済環境においてはまずコスト削減から取り組むべきであり、分析的・内的アプローチである、リーン、シックスシグマなどから事業改善をスタートさせるべきと考えます。業界標準のやり方を取り込む参照モデリング、他社の優れたところを参考にするベンチマーキングも有効でしょう。

ただし、前述したように、分析的なアプローチは現状のやり方の改善までは可能ですが、新たなビジネスモデルを生み出し、イノベーションを実現することは得意ではありません。

例えば、飲食店が、シックスシグマなどにより、来店客に対する店内オペレーションの改善にどれだけ取り組んでも、ステイホームにより高まるテイクアウト需要に応えるための新たな手順を生み出すことはできないのです。

そこで、まずは分析的アプローチで生産性の向上、コスト削減に取り組みつつ、環境変化に適応して売上を大きく伸ばすために採用すべきなのが創造的なアプローチです。

近年、デザイン思考が注目を浴びましたが、最近ではさらにクリエティブな要素が強い「アート思考」のアプローチも登場してきています。

現在のような大きな環境変化においては、事業革新、すなわちビジネスイノベーションが欠かせません。分析的アプローチで足元を固めつつ、創造的アプローチで新たなビジネスモデルを生み出すことが現在の企業には求められていると思います。

(参考文献)

From Product Innovation to Organizational Innovation – and what that has to do with Business Process Management, Jan Recker (PDF)