Process Mining Case: Suncorp – Huge improvement in Claim handling process
サンコープ(Suncorp)はブリスベーンに本社を置く、オーストラリア最大の保険・金融事業グループです。従業員数は16,000人以上、顧客数は900万人に上ります。
サンコープ社がプロセスマイニングに取り組んだ時期も早く、2012年頃からです。当時は商用ツールは普及していません。そこで同社では、オープンソースのプロセスマイニングツール、「ProM」を利用し、クィーンズランド工科大学の研究者の支援を受けて保険業務のプロセスマイニング分析に取り組んだのです。
保険業務のプロセスは、E2E(End-to-End)では、保険商品の開発から販売、サービス、そして保険金請求処理までが含まれ、業務要素は500に上ります。また、保険商品の種類としても、家財保険、自動車保険をはじめ30種類を超えます。結果として、プロセスのバリエーションとしては3000以上と非常に複雑なものです。
こうした複雑なプロセスを運営するサンコープ社では以下のような課題を抱えていました。
・ガバナンス不在:現場担当者のトレーニングが不十分、かつ手順が確立されておらず、責任者が不明確
・トップの支援不足:トップの理解が弱く、現場の改善のために必要な投資や支援が十分に得られない
・計画・ツールの欠如:プロセス最適化のための計画やツールが不足
上記のような課題を解決するため、同社ではプロセスマイニングを通じて現状プロセスを可視化し、問題点について社内の理解を得やすくしたうえで、必要な改善施策を講じることに取り組みました。
とりわけ劇的な改善成果を上げたのが、保険金の請求処理プロセスです。これは、例えば自動車事故を起こした場合に、契約者が行った保険金請求案件について、内容を審査し、事故に関連した費用をカバーする保険金を支払うまでの一連の手順です。
まず、保険金請求処理プロセスのスループット(総所要時間)の分布を分析。横軸に保険金支払額の大きさ、縦軸にスループットを取った2軸に各処理案件をプロットした下図を見ると問題が明らかです。
右上の「Complex Slow」は、支払保険金額が大きく審査に時間がかかることからスループットが長くなっていいる案件です。ある程度時間が長くなるのは許容しなければならないでしょう。
右下は「Complex Quick」です。支払保険金額は大きいもののスループットが短くなっています。安易な審査になっていなければ、支払保険金額が大きくてもすばやく契約者に振り込めるのは顧客満足度を向上させるでしょう。
左下は、「Simple Quick」です。支払保険金額は少なく、スループットも短い。問題なしです。
左上の「Simple Slow」が問題プロセスです。支払保険金額が少ないのにスループットが長くなってしまっている。保険金額の大きさと比較してよけいな手間、コストを要してしまっているという内部的な問題であり、かつ少額の保険金請求なのになかなか保険金が支払われない、という点においては顧客の満足度を低下させてしまうことにつながっています。
この問題の解決の基本方針としては、少額保険金請求案件はできるかぎりスループットを短くする、すなわち、プロット図で見ると、左上にある案件を左下に移動させるということです。
そこで、左上の「Simple Slow」のプロセスと左下の「Simple Quick」のプロセスの流れをフローチャートとして描き比較分析を行いました。
このように2つを並べてみると、例えば、「Simple Slow」(右)の場合、フローチャートの左側にある「Follow Up Requested」において「繰り返し(リワーク)」が大量に発生していることがわかります。
上記以外にも、様々な切り口でプロセスマイニング分析を行い、保険金請求処理プロセスのスループットを長くしているボトルネックを発見し、ボトルネックを解消するための改善施策を計画、実行に移しました。
改善効果は劇的なものでした。従来、保険金請求を受け取ってから保険金支払までのスループットはおよそ30日~60日でしたが、改善後はわずか平均5日へと大幅に短縮。顧客満足度の向上と業務効率化によるコストダウンを実現しています。