Process Mining Evolution – from Process Mining 1.0 to 2.0
当記事では、プロセスマイニングが今後どのように進化していくのかについて簡単にご説明します。プロセスマイニングベンダーは現在、この進化の方向に向かってツールの機能拡張に取り組んでいます。
プロセスマイニングとは、業務システムから抽出したイベントログデータに基づいて、現行業務プロセス(as isプロセス)を可視化し、非効率な手順やボトルネックなどを発見する「分析アプローチ」です。その目的は、業務プロセスの継続的改善にあります。多くの場合、大量のデータを扱うことから、ビッグデータ分析のひとつと言えます。またデータマイニングとも近い関係にあります。
さて、日々遂行される業務プロセスの継続的改善を目的としていることから、プロセスマイニングの分析アプローチは「記述的分析」を起点に、「処方的分析」に向けて進化を始めています。なお、これは、一般的なデータマイニングにおける分析アプローチの進化と軌を一にしています。
記述的分析 – Descriptive Analytics
記述的分析とは、ありのままの現状を把握することです。
イベントログから現行プロセスを「プロセスフローチャート」の形で見える化する機能、すなわち「プロセス発見(Process Discovery)」で得られるものであり、プロセスマイニング分析の最も基本的な機能です。(したがって、この機能がないものはプロセスマイニングツールとは呼べません)
診断的分析 – Diagnostic Analysis
診断的分析とは、記述的分析で得られた現行プロセスモデルにおける問題点(非効率やボトルネックなど)の要因分析を行うものです。
「なぜ、この箇所は想定より時間が掛かっていて非効率となっているのか」、「なぜ、ここで処理待ちが多く発生しているのか、すなわちボトルネックなのか」というなぜを追求します。「根本原因分析(Root Cause Analysis)」と呼ばれる深堀り分析です。
予測分析 – Predictive Analytics
予測分析では、現在仕掛中の未完了案件(Running Case)をリアルタイムに分析し、今後どうなりそうかを予測します。
記述的分析、診断的分析では、完了済、すなわち過去のイベントログデータを分析しますが、さらに、予測モデルを開発することで、未完了案件の未来の振る舞いを確率的に予測します。すなわち、次に起こりえる活動(Activity)はなんになる可能性が高いか、また、終了までの所要時間はあと何時間になりそうか、といったことを予測し、担当者に伝えます。
ある案件の今後の流れが好ましくない方向に行きそうである、またKPIの目標値よりも所要時間が長くなりすぎて約束納期を過ぎてしまう、といったことを事前に知ることができれば、適切な予防策を講じることが可能となります。
処方分析 – Prescriptive Analytics
処方分析は、単に今後のプロセスの振る舞いを予測するだけでなく、プロセス改善のために、どのような打ち手が望ましいかをアドバイスするものです。
医師が患者を診療して、熱やセキなどの症状を記述し、インフルエンザと診断、今後高熱がさらに続くと予測して、解熱剤を処方するように、業務プロセスの将来の悪化を予測したときに、どのような改善策を講じるかを提案する。これが処方分析です。
以上、説明してきた進化の4段階のうち、記述的分析と診断的分析は、多くのプロセスマイニングツールの機能として既に実装されています。また、ユーザーもこの2つの分析を活用していることから、「プロセスマイニング1.0」と言えるでしょう。機能としては、プロセス自動発見機能と関連する分析機能によって、根本原因分析を行います。
そして、予測的分析機能や、処方的分析機能を持つものは、「プロセスマイニング2.0」と呼ぶ先進的なプロセスマイニングツールです。一部のリーディングベンダーがこれらの機能へと拡張を始めているところです。
プロセスマイニング2.0の機能としては、以下の3つが挙げられますが詳細は別記事にて。
・予測的プロセス監視 – Predictive Process Monitoring
・処方的プロセス監視 – Prescriptive Process Monitoring
・自動プロセス改善 – Automated Process Improvement
なお、プロセスマイニング進化について詳しく調べたい方は、BPM、プロセスマイニングの専門家、Marlon Duma氏(エストニアTartu大学教授)の著作やスライドシェア資料、セッション動画をご参照ください。